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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(オ)112号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理由

上告人権田雄三、同権田鎮雄の上告趣意について

(しかし)自作農創設特別措置法三条により買収された農地の対価の額に関する不服の訴を所論のように期間の定めなくいつまでも提起しうるとすれば、同法の目的とする耕作者の地位の安定はいつまでも達成できず同法が自作農を急速創設しようとする政策の実行は不能となるのである。されば右増額に関する訴の提起期間が著しく不合理で実質上裁判の拒否と認められない限り之を一ケ月としても違憲(論旨は憲法一一条、九六条に違反するというのは憲法三二条違反というに帰する)ということはできない。このことは同法四七条の二に規定されている一ケ月の出訴期間についてさきに当裁判所が判示したところであつて、同一四条の出訴期間についてもその理を異にするものでないことは右判例の趣旨に徴して明である。(昭和二三年(オ)一三七号同二四年五月一八日大法廷判決。最高裁判所判例集三巻六号二〇一頁)

以上説示したように前記特別措置法一四条は憲法に違反するものでないから同法三条により買収された農地の対価の額につき不服がある場合は、その理由の如何をとわず、同一四条によつて出訴すべきものである。ところが原審が認定したように本訴は同条に定める出訴期間経過後に提起されたものであるから、所論本件買収が同法六条又は四三条が憲法二九条に違反するという理由について判断するまでもなく、本訴は不適法として却下されるべきものである。されば右同趣旨に出た原判決は正当であつて論旨は採用に値しない。

最後に本件買収令書における所論誤記は原判決が認定しているように土地そのものの同一性の認識を害する程度のものではなく且上告人の請求原因は、所論誤記の訂正によつて生じたものではないから、所論誤記訂正の時から本訴の出訴期間を計算すべしとする論旨は理由がない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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